今も昔も“薄さ”を想い。
18世紀、“白い黄金”と呼ばれた磁器。その“黄金”に憧れたヨーロッパの商社が、「こんな器を作れないか」と薄く焼かれた珈琲碗皿をこの町に持ち込んだのがはじまり。なんと言っても一番の魅力は光にかざすと中に注いだ液体が透き通るほどの、その薄さ。型に入れた水気の多い柔らかな土をコテと指の感覚のみで、薄く引き上げるように伸ばす。さらに、専用の型に載せて伏せて焼く。明治の初めから、まさに10年以上の歳月をかけて、その製法は生み出された。
ミリ単位の感覚の世界。「先代の見まねでやってきて19年経っていました。最近やっと肉づけの具合が分かってきて」と6代目の奥田将髙さん。頭でなく体で、掴みはじめた伝統の技。だが目指すのはその先の、さらなる薄さ。「飲み物の美味しさが全然違うと言ってもらえるんです」。“薄さ”を追い求める、職人たちの想いと、長い歴史は、こうして継がれていく。