暮らしをトータルで提案する店で美濃焼を盛り上げる
毎年ゴールデンウィークに開催される土岐市最大の陶器祭り「土岐美濃焼まつり」。佐賀の「有田陶器市」、瀬戸の「せともの祭」に並ぶ、日本三大陶器祭りの一つで、毎年30万人以上の人出で賑わう。
土岐美濃焼まつりの会場、陶磁器卸業者が軒を連ねる「織部ヒルズ」で商社を営む藤田陶器株式会社の藤田裕子さん。“やきもの生産日本一”と呼ばれる、土岐市の美濃焼を盛り上げてきた祖父や父の背中を見て育った彼女は、先人たちが守り、創り上げてきた土岐市の美濃焼を、いつか自分も、自分なりに広めていきたいと幼い頃から思い描いていた。
全国に販路を持つ、業務用食器の商社である藤田陶器株式会社は、消費者が求めている商品を選び、そうした品を的確に販売店に届けることが役割だ。でも、もっと美濃焼を広めるためにはと考えたのが、ハンドメイドの作品や雑貨と一緒に陶器を販売するということだった。「食べることや雑貨で部屋を彩ること、おしゃれを楽しむことって生活の一部。暮らし方の提案として、空間に合う器を置くことはできないかなって思ったんです」。
そして、2009年4月、思いが詰まった陶器と雑貨の店「Felice(フェリーチェ)」をオープン。店内に並ぶのは、地元でご縁のあるハンドメイド作家たちのアクセサリーや衣料品、木工品など、藤田さん自身が暮らしに取り入れたいと思う雑貨たち。そこにともに並ぶのは、オリジナルデザインの器だ。
商社である藤田さん自身は器をつくることができない。だからこそ、その時のテーマや空間に合う形や色出しを得意とするメーカーに頼み、その技を器に反映してもらう。「コンセプトは使うことも、食事をすることも、楽しくなる器です」。そして雑貨店「Felice」を通して、その器を具体的に使うシーンを暮らしの道具とともに伝えている。