化粧土と釉薬を巧みに使った、「粉引」「三島」「黒十草」
鈴木陶苑の代表的なシリーズの「粉引」は、父の秀俊さんが得意とする技法。生地に白い化粧土を塗り、その上から透明な釉薬をかけて焼成したやきものだ。生地に使うのは、鉄分を多く含んだ赤土。化粧土が薄くかかったところから土の色がにじみ出すことで、温かな風合いが生まれる。「三島」は、朝鮮半島で生まれたやきものの一種で、成形したうつわが乾かないうちに印花などで三島模様と呼ばれる模様を施す。そこへ粉引と同じ白い化粧土をかけ、表面をぬぐうことで、刻印した部分の溝にのみ化粧土が残り、模様として浮き上がる。
江戸時代から愛される文様の「黒十草」は、白生地に縦縞模様を撥水剤で引き、黒色の化粧土を上からかけることで、白と黒のコントラストを引き出したもの。線に強弱をつけるなどして、手仕事ならではの味を追求。深みのある黒により、うつわのシャープさが際立ち、盛った料理を美しく見せる。
「化粧土と言われる泥状の粘土は、種類が色々とあり、火色と呼ばれるピンクの色が浮き出る化粧土や色の付いたものもあります。品物によって使い分けています」と哲平さん。また、濃度によって表情が変わるため、液体比重を測るボーメ計と呼ばれる器具を使って慎重に材料の配分を調整。さらに、仕上げにかける透明釉は、淡い表情やはっきりとした表情など、出したい雰囲気によって4種類から選び、濃度を細かく調整してそのうつわにあった色合いに仕上げる。