家業の上絵付に従事。49歳で陶芸家の道へ
徳利の産地として知られる土岐市下石町。住宅が並ぶ細い路地を進むと、伝統的な穴窯と煙突がふと目に留まる。隣の工房では加藤保幸さんが今日も作品と向き合っている。
加藤さんは下石町で上絵付を営む家で生まれ、ごく自然に跡を継いだ。絵付けは受注産業。商社から依頼されたうつわに指定の絵を描くうちに、ふつふつと作品づくりへの熱が芽生えていった。「いくらきれいに描けても自分の名前が出ることはなくてね。好きなように作品を作りたくなったんや」。時はバブル直前。思い切って窯と土を購入し、作家としての道を歩み出した。49歳、遅咲きのスタートだった。しかし、絵付け以外の工程はどれも初心者。仕事の傍らとにかく土を触り、週末には足繫く個展に通い多くの作品に触れた。独学で技術を修得し、60歳でこの玄保庵を開いた。