器の制作から、内外装特殊タイル製造へ
鈍く光るような鉄釉の器の上に、品よく盛り付けられた色とりどりの料理。食材の鮮やかな色合いが鉄釉の黒によく映え、その凛とした美しい佇まいに、今日この日の料理を噛みしめて味わう。
この用の美を貫く、料理が映える器を生み出したのは丸仙化学工業所。創業は1898年。土岐市の伝統産業である美濃焼の技法を使った器を制作しているが、実は内外装特殊タイルを制作する特殊なメーカーだ。
創業時は初代の水野仙九郎氏が陶器づくりを始め、主に伝統的なやきものである志野釉や織部釉の徳利やぐい吞み、抹茶茶碗などを制作。昭和に入り、家庭でも洗面台や浴室などの水回りにタイルが用いられるようになると、将来性を見据えて大幅に方向を転換。やきものの技術を生かし、タイル生産へと乗り出した。
その後、動力を使って土を混練する土練機を導入したことから、タイル生産が全体の8割にまで上るなど、本格的にタイル製造へと主軸を移行。以来、内外装特殊タイル製造メーカーとしての地位を確立してきた。