伝統技法と絵付け技術の融合から生まれた「粉引彩重」
そして約10年前に完成したのが、「粉引彩重(こひきいろえ)」という技法だ。素地に白い化粧土をまとわせる「粉引」をベースに、泥漿を袋から絞り出し、表面に盛り付けながら描く「イッチン」で花などの模様を立体的に描き、さらに3~4色の下絵具を幾重にも重ねる。仕上げに透明釉をかけて焼成すると、水彩画のように鮮やかで柔らかい色彩が生まれる。粉引やイッチンといった伝統的な技法に、下絵具を重ねながら描くという自社で培ってきた絵付けの技術を融合させることで、自分たちにしかできない独自の技法を確立した。
「手間はかかりますが、やきものならではの繊細な表情をちゃんと伝えたいですね」。丹山窯では、粉引だけでも7種類もの化粧土を使い分ける。それぞれ下絵具の染み込み具合や、仕上がりの手触りなどが異なるからだ。また、イッチンや彩色といった絵付けはすべて手作業のため、職人の確かな技術と多くの時間が必要になる。その手間暇から、柔らかい濃淡や奥行きのある世界観が生まれるのだ。