まちの活性化を見据え、ユーザー目線で美濃焼の魅力を発信
酒井さんの頭にいつもあるのが、「美濃焼業界の活性化のためにできることとは何か」だ。やきもの作りの技術継承を支える職人たちへの想いを、自社だけにとどまらず、土岐市のまち全体にも発展させることができないかと、美濃焼の宣伝を積極的に行っている。「わざわざ土岐市に来てくださった人に、美濃焼の良さを知ってほしいから。好みを聞いて、ぴったりの商社さんやメーカーさんがあれば勧めてます。自社の商売よりも優先しちゃって、何してんだろうと思うときはあるけど(笑)」。そうして多くの人に、それぞれ実際に美濃焼を見て、触れてもらえる機会を提供する。「大量生産技術だけが特長だと思われているのはもったいないからね。どんなうつわも作れる技術があるからこそ、美濃焼は生き残ってきた。それは実際にうつわを見てもらえればわかるはず」。
買い物が楽しめる織部ヒルズを中心に、より人を呼べる環境をつくることが酒井さんの新たな目標だ。絵付けや成形などが体験できるアトリエを集約させるなど、買い物だけでなく、“体験”をプラスすることで美濃焼の技術力の高さや魅力を感じてもらえるはずだと確信している。「もっとオープンなまちにしていかないといけない。それが来てくれた人に“美濃焼ならではの良さ”を伝えることにつながるから」。酒井さんからは、美濃焼を、この土岐市の産業を、守っていきたいという熱い想いがあふれていた。