伝統工芸士の技が生きた、二人にしか製造できない美濃焼
手洗い鉢の大きさは、小さいものでも直径は約25cm、大きいものだと直径約40cmにもなる。ろくろを挽く際、大きければ大きいものほど歪みが生じやすく、思うような形に成型することは難しい。それを実現させるために欠かせないのが、手洗い鉢に適した素材と、職人の確かな技術である。
繊細な造形よりも歪みのない形が求められる手洗い鉢は、粘り強さのある信楽の土が向く。特に真山窯で大切にしているのは、古い土を使い、程良い粘り気になるまで寝かせてから成形を行うこと。また、浩一郎さんと真司さんはともに美濃焼伝統工芸士に認定されており、特にろくろ成形における技術の高さは折り紙付きだ。ブレのない手さばきで、土の塊を見事に鉢状に成型。陶器ならではの重厚感を出すため、ふちは厚めに仕上げるといったひと手間も、手作業だからこそ成せる技だ。ろくろを挽いてできる指跡は美しい模様に、揺らぎは絶妙な味わいとなる。「家は一生に一度きりのもの。だから内装の一部である手洗い鉢も、一点ものが喜ばれるはず」。その読み通り、真山窯の手洗い鉢は自然素材を大切にした木の家や、現代に馴染む和風の家屋を作りたいという人々に大好評。みるみるうちに注文が舞い込むようになった。