味を大切にするからこそ、たくさんは作れない
土は、粘り強さのある信楽の土を使用。丈夫なため曲げたりしても生地が切れずに形を作るのに最適なのだ。作業は伊藤さん夫妻と2名の職人で分業し、伊藤さんの作った完成図を頭に描きながら素早く形を整えていく。少しでも時間が経つと土が乾きすぎてひび割れを起こしてしまうため、スピードが求められる神経を使う作業だ。成形したら2日間乾かした後、素焼きをして水分を抜く。その後、胴体や耳の部分に釉薬をかけたり、銅板で華やかな柄を転写したりと加飾を施し、1,250度で焼成。焼きあがった時のどっしりとした質感と温かみのある表情は土ものならではだ。
「干支やで毎年モチーフが変わる。デザインも毎回同じじゃないし、どれも人の手で成形するで同じように作るのは大変。だからたくさんは作れない一点もの。それがうちの魅力かな」。手作りならではの難しさは常に隣り合わせ。毎年限られた量しか製造できない。でも、だからこそ生まれる味がある。豊大窯の置物のどれも表情は伸びやかで、どことなくユーモラスにも見える。愛らしさや温もりが溢れているのは紛れもなく、手仕事の魅力なのだ。