土にこだわった新しい美濃焼を
素朴な土の風合いが釉薬越しに映える「TOKI」、本物の石と見まがう質感と形の「likestone」。どちらも、粘土から開発した芳泉窯のオリジナルブランドだ。
1980年の創業から、大手飲食チェーンの丼などの業務用食器を中心に手掛ける芳泉窯。2001年、2代目の北邑宜丈さんは市場の縮小傾向に伴い、オリジナル商品を作ろうと立ち上がった。「陶芸家は山に行って粘土を取ってきたり、川の石をすりつぶしたりして土の配合からこだわりますが、同じようなことを業務用の工場でやろうと思ったんです」。
いざ土作り、といっても平坦な道のりではなかった。通常は専門業者が配合した土を購入するが、それをなんのノウハウもない窯元が一から始めるのだ。「土と石を混ぜて作るんですが、配合が良くないと成形ができないんです。石の成分が多いと固すぎて割れてしまったり、土が多いと焼成で溶けてしまったり…」。目指すのは、オリジナリティのある粘土。何度も失敗を繰り返し、実に3年の月日をかけて誕生した“HOUSEN-NENDO”は、蛙目(がいろめ)粘土にさまざまな地方の陶石や長石などをブレンドし、見た目からも土の風合いが感じられる仕上がりとなった。